アルツハイマー型認知症の原因の話
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介護, 健康 4-ヒドロキシノネナール, ApoE ε4, アミロイドβ
アルツハイマー型認知症の原因は未だ解明されておらず、今なお世界中で研究が続けられています。
ですが、アルツハイマー型認知症の発症に関係があるとされている物質はいくつかあり、
- アミロイドβ
- アポリポ蛋白E ε4
- 4-ヒドロキシノネナール
などが挙げられます。
アミロイドβ
アミロイドβというタンパク質が脳内に堆積することで脳の神経細胞を破壊し認知機能に障害を与え、アルツハイマー型認知症を発症するという説が今まで有力とされてきました。
しかし、アミロイドβは健康な人の脳でも蓄積が見られ、アルツハイマーの発症とは関連がないという研究結果も報告されています。
これは米・ミネソタ州のメイヨークリニックによる研究で、認知症ではない30〜95歳の男女 1246人を対象に行われた調査をもとにしたものです。
この調査では、70歳くらいまでの対象者では少なかったアミロイドβの蓄積が、70歳を過ぎたくらいの対象者からは顕著に見られだすという結果が出ています。
また、脂質の代謝などに関係があるアポリポ蛋白(ApoE)の三つある種類のうちε4というタイプを持っている人は、アミロイドβの蓄積量が多いという結果も出ました。
この研究では、ApoE ε4 とアミロイドβとの間に関連は見られましたが、アミロイドβとアルツハイマー型認知症の間に関連があるという結果は得られませんでした。
4-ヒドロキシノネナール
アルデヒドの一種である4-ヒドロキシノネナールという物質が脳の神経細胞を破壊することによって、アルツハイマー型認知症が引き起こされるという説もあります。
4-ヒドロキシノネナールは、サラダ油の主成分であるリノール酸という脂肪酸が体内で活性酸素の作用によって酸化してできる毒性の強い物質で、アルコールが分解される過程で生じるアセトアルデヒドと同じく、アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きによって分解することができます。<コチラもご覧ください:お酒とアルツハイマー病の話>
ただし、ALDH2には三つのタイプがあり、アルデヒドに対して
①分解力が強いタイプ
②分解力が弱いタイプ
③全く分解できないタイプ
のいづれかを人は持っています。どれを持つのかは遺伝によって決まります。
日本人を含むアジア系人種(モンゴロイド)の場合、①は50%、②は45%、③は5%程度の割合ということです。
白人・黒人の場合はほぼ全ての人が①のタイプだそうです。
日本医科大学の研究では、ALDH2の②のタイプを持つ人はアルツハイマー型認知症に1.6倍罹りやすくなり、さらにALDH2の②のタイプとApoEのε4のタイプを併せ持つ人は30倍も罹りやすくなるという結果になったそうです。
さあ、ここで疑問に思ったことがあります。
もし4-ヒドロキシノネナールがアルツハイマー型認知症の原因だとすれば、ALDH2の①のタイプを持つ人ばかりの白人・黒人ではアルツハイマー型認知症患者がアジア人よりもかなり少ないのではないかと。
そこで、国際アルツハイマー病協会の『世界アルツハイマーレポート』というものがあったので見てみたのですが、そこにこんな表が掲載されていました。
この表によると60歳以上の人の認知症患者の割合は、アフリカでは全体的に低くなっていますが、その他の地域ではアジア人よりも高い割合となっているところが多いようです。
この調査ではアルツハイマー病以外の認知症も含まれているとはいえ、ALDH2のタイプを反映した結果になっているとはとても思えません。
結局、アルツハイマー型認知症の原因は、よく分からない というのが今回の記事の結論です。
☆
分解力の強いALDH2の①のタイプを持っている人でも、加齢とともに分解力は弱まっていくそうです。これは肝機能の低下の影響と思われます。
このこともアルツハイマー病の発症に関係があるかもしれません。
何であるにせよ、早く真相を究明してほしいものです。
とりあえず、バランスのよい食事を摂るようにするとか、毎日運動をするとか、健康的な生活を送るのが無難だと思います。
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